目を覚ますと目の前には見慣れた天井があった。






「……」






私なんでベットにいるんだっけ…?






そう考えてハッと子供の姿が目に浮かんだ。







「あぁ……」







私の頭に次々に恐怖がよみがえる。








「い…や……いや……いや………いやーーーー!!!!!」






止めどない恐怖の渦が私を飲み込む。







体が引っ張られるが体をよじって逃げる。







今度は肩を掴まれる。







「美幸!!!!!!」







声を聞いてハッと目を開ければ目の前には焦ったような顔の昌廣さんがいた。










「ま…さひ…ろさん?」







「あぁ。ここはあそこじゃない。俺たちの家だ。」






力強い瞳で見つめられ私は安心して昌廣さんに抱きつく。





昌廣は私が落ち着いたのを見て自分の背後に視線を向ける。






「伯。何か飲み物を持ってこい。…お前たちはまだ向こうに行ってろ。」





力なく昌廣の後ろを見てその真っ直ぐな力強い瞳と視線が混ざり無意識に手を伸ばしていた。






私の力なく伸ばされた手を温かい手が握る。





私は震える体で昌廣から離れ棗に抱きついた。






とても安心する自分が居るのが分かった。






伯と昌廣はかなり驚いた表情をしていた。






棗にすり寄ってその石鹸の薫りで少しずつ落ち着いてくる。






「もう…大丈夫。……ごめんなさい、取り乱して。」






棗から離れて私は立ち上がる。








「まだ無理はするな」






私の体を支える棗に力なく微笑んで私は伯を見た。






「伯………」






あの子供は、と聞こうとしたが声が出せなかった。





それを察した伯が優しく微笑んだ。






「あの子供なら大丈夫だ。無事に施設に保護され里親は捕まった。」






それを聞いて私は目を瞑った。





少なくとも一人は助けられたのだ。








「そっか……」






私は小さく頷いた。






「……美幸。」






伯に名前を呼ばれ私は伯を見上げた。






ガシッと頭を掴まれる。






「大丈夫だ」





そう力強く言われてしまえば私の心はそれだけで安定するのだ。





「…うん」





せっかく外食に行く予定だったのに行けなくなってしまった為今晩は出前を頼むことになった。






昌廣がいると言うことは私の状況を知って急いで帰ってきてくれたのだろう。






私はお礼のつもりで昌廣に抱きついた。






棗の視線が物凄く痛いが気にしない。





それが伝わったのか昌廣は何も言わずに私の頭を撫でてくれた。







私はこのときほど彼らとずっと一緒にいたいと願った。