「……」







棗が紙袋から取り出したのは羽の飾りが付いた黒革のキーケース。






「……ひ、人にプレゼントあげるのなんて初めてだったから……アキラにも手伝って貰って買ってみたんだけど……」






無表情な棗の顔を見て私の言葉はどんどん小さくなる。






しかし突然体が引き寄せられたかと思うと棗に力強く抱き締められていた。







「ありがとう。すぐに使う。」






棗を見れば愛しさが込められた瞳で見つめられその整った顔には優しい笑顔が浮かんでいた。







「わー!棗のそれ、格好いい!!」と環






「僕たちも欲しい~!」と棗を羨ましがる斎





「棗は鍵をそのまんま持ち歩くから危ねーんだよな」と笑いながら言う敏次






「黙れ、敏次」と低い棗の声がした。






それからは倉庫内で皆がワイワイ騒ぐのを見ていた私。






気のせいか飲み物の殆どがお酒の缶に見えるし酔っぱらっているであろう人達がちらほら居るのに気が付いたが私はクスリと笑うだけだった。






ポンと頭の上に手が乗る。






振り返らなくても誰のものか直ぐに分かった。






「……誕生日おめでとう。…棗」






そう言うと後ろ越しにぎゅと腕が周り抱き締められる。






「楽しいか?」






いつも聞かれるその言葉に私は目を瞑る。






真っ暗になる視界でも倉庫内の喧騒が閉じたまぶた越しに見える気がした。






「私が楽しいと思えるのは皆が…棗が居てくれるからだよ」






はにかんだように笑うと棗もフッと笑った。





「……その顔、誰にも見せるなよ」







「?どの顔?」







私のそんな質問に答えずに棗はそっと私にキスをした。