私を抱えたまま歩き出す棗。






少し歩くと道に大きなバイクが止まっていた。





それは見事なまでに純白のバイクで横には黒い羽とその周りに複数の群青と深紅の蝶が描かれていた。






「……綺麗……。これ棗の?」






そう言うとフッと笑った棗が頷く。






そして私をそっとバイクに乗せると着ているジャケットを脱いで私の肩に掛ける。





Tシャツ一枚の彼の姿は見惚れるくらいにかっこよくて逞しかった。





私は慌てて着せられたジャケットを脱ぐ。






「な、棗!これは棗…が……」





気付けばまたキスをされていた。





驚いて体を動かせば頭に彼の腕が伸び固定される。





「…や……」





「美幸が着てろ。」





やっと離れたかと思えばそう言う棗。






「で、でも棗が風邪引くから」





そう言うとまた顔を近付けてくる棗。





「お前のそんな姿を見て俺の理性が保てると思うか?」





そう言われて自分の姿を見下ろす。






服は完全に濡れて体に貼り付いて多少透けてはいるが破けたり肌が見えてるわけでもなく何がいけないかが分からなかった。






首をかしげれば返ってきたのはため息だった。





「いいから着てろ。」







「いや。棗が着て」







「襲われたいのか?」








「……着ます」








素直に言うと何故か舌打ちされた。






今の彼なら本当に襲ってきそうで怖い。