先輩と風呂であんな話をしたせいもあるんだと思う。
すごく陽毬を抱きしめたい衝動に駆られた。


グッと湧き上がる感情を堪えて席に戻る。


「おかえり。……ん?お前いつも氷入れてなかったか?」

「いや、俺本当は入れないんで…」


俺の習慣のことと、先程店員に言われことを先輩に話すと「陽毬ちゃん健気だなぁ」と感心したような言葉が返ってきた。


「お前こんな良い子に嫌いだなんて言ったのか」

「嫌いとは……いや、はい。本当に後悔してるんですよ」


言葉では嫌いと言っていなくとも、嫌いだと思って拒絶したことは本当だし、それが陽毬にもしっかり伝わってしまっているのだから言ったのと同じだ。

「好きじゃない」とも言ったしな…。


「捕まえておかないと他のやつに取られるぞ〜」

「分かってます」


もう認めるしかない。

俺は陽毬が好きだ。


あの柔らかい笑顔も。

優しい雰囲気も。

無邪気なところも。


誰かに取られるわけにはいかない。

全部俺のだ。


「晴翔、目が怖いわ。女に興味がなかったやつが本気になると怖いんだよなー」


「先輩だって舞子さんと付き合った時、周りを牽制しまくってたくせに」


「そりゃそうだろ。俺のだぞ」


だよな。

独り占めして甘やかすのは自分の惚れた女1人でいい。

陽毬には、俺を惚れさせた責任をとってもらおうか。

そんなことを考えながらサイダーを一気に飲み干した。