(クララside)

「ここが、そのお店」



看板には『お弁当の成瀬』と書いてある



そうそう!

ここに来たかったの!



「あら歩君、いらっしゃい」



ふんわりした優しい雰囲気の女の人が
ニコニコ迎えてくれた



「あの・・・幸せの卵焼きください」



「え?」



「売っていませんか?
 このパンフレットには
 幸せの卵焼きって書いてあるんだけど・・・」



店員さんはパンフレットをみると
フフフと優しく微笑んだ



「もう、奏多君ったら!
 まさかパンフレットにのるなんて

 この前ね
 中学生くらいの男の子に
 この商店街のおススメを聞かれたんだって

 その時に
 うちの卵焼きは『幸せの卵焼き』って
 言っちゃったみたいなの
 フフフフ」



初めての
人間界でのお買い物に緊張していたけど
店員さんの気さくな雰囲気に吸い込まれ
いつのまにか私も笑っていた



「この人は、お弁当屋の美紅さん
 話に出てきた奏多は
 美紅さんの旦那さんね」



「え・・・と、天宮クララです」



「クララちゃんね
 良かったら卵焼き食べてみて
 サービスしちゃうから」



「え?良いんですか?」



「大丈夫よ
 今度歩君に、店番してもらうから」



「美紅さん、何だよそれ!」



「歩君が店番すると
 お惣菜がよく売れるのよ。フフフ」



「奏多が俺の兄ちゃんの親友だからって
 俺に働かせんなよな・・・」



「ごめん!ごめん!冗談よ!
 さっ、こっちに座って卵焼きどうぞ」



ふっくら黄色の卵焼き

一口食べると・・・



甘くておいしい!!!
頬っぺた落ちそう!!



私は知らぬ間に
おっとりした顔になり
手でほっぺを覆っていた



「クララちゃん、幸せそうな顔してんじゃん。
 美紅さん!『幸せの卵焼き』って
 名前つけちゃっても良いんじゃない?」



「もう歩くんたら!
 そんな名前つけたら
 私、プレッシャー感じて
 作れなくなっちゃうからね」



ニコニコ笑いながら
美紅さんはお店の奥に行った



「お昼用に、お弁当買ってこうぜ!
 ここ、好きなおかずを選べるから
 俺チョイスで良い??」



「うん。お任せする。
 でも・・・卵焼きは入れてほしい」



「幸せの卵焼きな!了解!」



歩君のさわやかな笑顔から
目が離せなくなってる



もっともっと
歩君に笑ってほしいな



その笑顔を
ずーっと見ていたいな




・・・・・

ダメダメ!
そんなこと考えちゃダメでしょ!クララ!

今日の夕方には
私は魔法界に帰るんだから・・・

もう歩君とは
一生会えないんだから・・・


「クララちゃん、他に行きたいとこは?」



「え・・と
 人間界の小学校に行ってみたい」



「小学校?
 今日は学校お休みだから入れないし
 子供達誰もいないよ」



「そうなんだね・・・
 人間界の子供達と
 お話ししてみたかったんだけど・・・」



「じゃあ、いいところがあるよ」



歩君はそう言うと
私をある場所に連れてきてくれた