365枚のラブレター


(クララside)

歩君・・・

もうすぐ迎えに来る・・・



私は舞ちゃんに借りた
桃色のパーティードレスの上に

薄いコートを羽織り
寮の前に立っていた



歩君は
本当に私のことが好きなのかな?



今でも花純さんのことが
忘れられないんじゃないかな?



そんなことが
頭の中をグルグルグルグル回り続けていて
もう
愛されている自信がなくなってしまった



ダメダメ!

結婚式なのに!

おめでたい場なのに!

こんな暗い顔して行っちゃだめでしょ!



自分に喝を入れていると



テカリのある黒いスーツに
ワインレッドのネクタイをしめた
歩君がやってきた



いつも以上に大人っぽくて
歩君、カッコイイ!!



「クララお待たせ。行こっか」



「うん」



歩君が手を出してきたので
繋いで式場に向かった



「クララ、髪型にあってるじゃん」



「舞ちゃんがね、ヘアレンジしてくれたの」



「メイクは自分でしたの?」



「・・・これも・・・舞ちゃんです」



「すっげー可愛い!」



ドキドキドキッ!



歩君に見つめられて
スゲー可愛いなんて言われると
ドキドキしすぎて
心臓が耐えられないよ



すごく嬉しいのに
素直に喜べない自分もいる



歩君はきっと
花純さんがまだ忘れられないんでしょ・・・



私と付き合っているのは
花純さんへの気持ちを
ごまかすためなんでしょ・・・




式場に着くと、歩君が謝ってきた



「クララごめん

 俺、親族の部屋に行かないといけない

 あそこに美紅さん達がいるから
 一緒に待っていてくれる?」



「・・・わかった・・・」



歩君
私を置いて行ってしまうんだね



私は美紅さん達に
笑顔を向けることができそうもなくて
待合室の隅で
一人ぽつんと座っていた



「皆さま、お待たせいたしました
 チャペルへのご移動をお願いします」



人の流れにのって
私は一番最後にチャペルに入り
一番後ろの席に座った



歩君はお父さんたちと一緒に
一番前の席に座っている



花純さんがはっきり見えるその場所で
歩君は何を思うんだろう・・・



「新婦 花純さんの 入場です」



真っ白なドレスに身を包み
ベールをおろした花純さんが
お父さんと入場してきた



この人が・・・花純さんか・・・


歩君の・・・初恋の人・・・


多分今でも忘れられない
歩君の大切な人・・・



ベールをしていても
その綺麗さは滲み出ていた



この人に・・・ 

私は勝てないな・・・



そして歩君のお兄さんの尊さんが入場して
二人が並んだ



時折、見つめ合って微笑み合って
永遠の愛を誓いあう二人



私もいつか
歩君とこんな風に
永遠を誓いたいなと思ってしまう



生まれた星が違う私たちには
そんなこと
はじめから無理だったのかな・・・




挙式が終わり
尊さんと花純さんは
たくさんの祝福の中会場を出て行った



そのあと
招待されたみんなも
会場の外に向かって動き出した


私も外に出なくちゃ!



ハンドバックを抱え
立ち上がったその時



「クララ待って!」



「え?歩君・・・」



「ちょっとこっちに来て」



私は腕を握られ
みんなの流れに逆らって
チャペルの前に連れて来られた



え?
尊さんと花純さんが
チャペルに戻ってきて
通路を挟んで右のゲスト席に座った



左側に
奏多さん、美紅さんが座った



4人とも
微笑んで私たちの方を見ている



すると突然
黒いスーツの女性が
オルガンを弾き始めた



幻想的で柔らかいオルガンの音色が
チャペルを包み込む



目の前にいる歩君を見ると
緊張した顔でうつ向いている



「歩君、これって??」



「この4人の前で
 どうしてもクララに伝えたいことがある」



「え?」



「俺、クララのことが大好きでたまらない

 そんなことが面白い?ってことでも
 アハハて楽しそうに笑って

 子供たちと思いっきり遊んで

 バイトと学校のことで疲れてるはずなのに
 弱音を吐かずに頑張って

 出会った時からずっと変わらない思いを
 ここに誓います

 クララ・・・大好きです
 一生俺の隣にいてください」



私のこと・・・
そんな大事に思ってくれていたんだ・・・



私は
歩君は花純さんのことが好きなんじゃないかって
勝手に疑っていたのに・・・



「歩君・・・
 こんな私で本当にいいの?」



「俺、クララじゃなきゃダメだから・・・
 この指輪、受け取ってくれる?」



「え?」



歩君はポケットから
ハンカチで包んだ指輪を取り出すと
私の右手の薬指に
スッとはめてくれた



「この指輪って?」



「この前ショッピングセンターに行ったときに
 可愛いって言ってはめてたやつ

 結婚するときには
 ちゃんとした指輪を用意して
 左手にはめてやるから」



「嬉しい・・・ありがとう・・・」



「俺と、ずっと一緒にいてくれるよな?」



「うん」



座っていた奏多さん達が
温かい拍手で包んでくれた



「クララちゃん、
 これ、もらってくれる?」



「花純さん?」



花純さんの手には
真っ赤なバラの中に
白いウサギがちりばめられた
ブーケが握られていた



「新婦からブーケをもらうと
 幸せになれるの

 このバラ、ペーパーフラワーなんだけど
 私が作ったの。

 ウサギたちは、尊君が作ったのよ」



「クララちゃん
 歩のことよろしくな」



「花純さん・・・尊さん・・・」



自分たちの結婚式の準備で忙しかったと思うのに
私のために作ってくれたんだ・・・



私は嬉しさのあまり
泣き出してしまった



いつか私も
ウエディングドレスを身にまとって
歩君と結婚式をしたいな

尊さんと花純さんのように・・・