(クララside)

「クララ?忘れ物ない?」


「大丈夫!大丈夫!
人間界のパンフレットも地図も
ちゃんと持ったから」



今日は7月7日

私の16歳の誕生日



猛反対の親をなんとか説得して
私は1日だけ
人間界に旅行に行くところ



「人間界では魔法は使えないからね」


「わかってるよ」


「人間界に入る扉を開く前に
 右にある赤いボタンを押すのよ

 人間界の時間を1分間だけ
 止めてくれるものだからね」


「大丈夫!大丈夫!何度も聞いたから」


「でも・・・お母さん心配なのよ・・・」


「夕ご飯までには帰ってくるから
 行ってきまーす!!」



生まれてから今まで
私は魔法界から出たことがない



人間界に行くのだって
正直に言うとちょっと不安なの



でも
どうしても人間界のある場所に行って
やりたいことがあるんだ



私は人間界行の
グルリングルグルすべり台を滑り
人間界へ入る扉の前まで来た



ガチャリ



ドアノブを回し
勢いよく扉を開けてみる



そうそう!
ここに来たかったの!
この神社・・・って・・・



え????



私の目の前に
私と同い年くらいの男の子が立っていた



細身で白いズボンに
紺のVネックシャツを
綺麗に着こなすその男の子は
目にかかる長めの髪に
ゆるいウエーブがかかっていた



この男の子・・・

カッコイイ・・・



その男の子と視線が絡み
つい見とれていると・・・



「幽霊じゃないよな?」


「え?・・・違います!違います!
 幽霊じゃないです!」


ガチャリ


私はあわててドアを閉めた




あ!!しまった!!

人間界の時間を止めるのを
忘れちゃった!!



宙にユラユラ浮いたドアから
出てきたところを見られちゃった!!



『言霊神社に謎の女の子出現』


『宙に浮いたドアから女の子が』


『宇宙人か?それとも悪魔か?』


明日の人間界で
ニュースのトップ飾っちゃうのかも・・・



私のせいで
魔法界の存在が人間界にばれちゃうかも・・・



どうしよう・・・どうしよう・・・

この男の子に口止めしなきゃ!!!