夕日に照らされた歩君の真剣な表情に
私の心が揺れ動かされる



ダメだよ!クララ!



人間と恋はできないんだから・・・



歩君のことが好きって気持ちは
抑え込まなきゃダメ!!



「ごめんなさい・・・
 歩君とは付き合えない・・・」



「それって、俺とクララが
 住む世界が違うから?」



「うん・・・・
 魔法界の掟があるの

 人間と恋に落ちると
 もう魔法界には戻れないの」



「そう・・・なんだね」



「来年の誕生日に
 人間と永遠の愛を誓ったら
 私も人間になれるの」



「それなら・・・」



「でも歩君と付き合ったら
 来年の自分の誕生日に
 永遠の愛を誓わないといけない

 そうしないと私は消えてしまう・・・
 人間界からも、魔法界からも・・・」



「俺、ずっと初恋の人が忘れられなかった
 小5からずっと、5年間も

 だから毎日言霊神社に行って
 その人以上に好きになれる人と
 出会えるように願ってたんだ

 今日クララと一緒にいて
 その人よりも大好きだって思った
 
 そんなこと初めてなんだ

 このままクララとサヨナラなんて嫌だ!
 俺とのこと、もう一度、考えて欲しい」



「・・・わかった

 ・・・考えてみる」




「一週間後に返事を聞かせて欲しい」



「わかった
 じゃあ私、魔法界に帰るね。」



フワリ




え?



心地いい香りが私を包んだと思った時には
歩君が私を抱きしめていた



こんな幸せを感じたのは
生まれて初めて



「絶対来てくれよな
 クララに会いたいから」



「うん」



私が歩君から離れた瞬間


チリリン カラリリリン
カラカラリリチリリン


一斉に風鈴が激しく揺れ出したかと思ったら
ぴたりと風鈴の音が鳴りやんだ



歩君も固まっている



「人間界の時間が止まったのね
 
 もう歩君と、バイバイの時間ってことね」



歩君に「またね」と言えぬまま
風鈴の下に浮かぶドアを開け
魔法界行きの滑り台を滑り降りた