マフィンとミルクココアという軽い朝食を済ませ、家を出る。ふわりと花の香りがヴァイオレットを包み込んだ。

「ヴァイオレット、おはよう」

近所の人に声をかけられ、ヴァイオレットも「おはようございます」と微笑む。

十歳まで住んでいた田舎は、隣同士がとても離れていた。今のこの隣同士の近い距離を、ヴァイオレットは気に入っている。田舎の距離はヴァイオレットには寂しく感じるのだ。

ブラウンのブーツで石畳みの道を歩く。ヴァイオレットが個人経営している相談所は、家から二十分歩いた場所にある。

道を歩いていると、ヴァイオレットの目に花屋が映る。吸い寄せられるようにヴァイオレットは花々を見つめた。

「相談所に飾ろうかしら」

ヴァイオレットはペチュニアを買う。八重咲きのピンクの可愛らしい花だ。

ヴァイオレットが相談所の前に着くと、ドアの前で誰かが相談所が始まるのを待っていた。グレーのチェックのワンピースドレスを着た長い赤毛の女性だ。歳はヴァイオレットと同じくらいだろうか。