【番外編 その3】
曇天の下、紫陽花前にて。



ああ、それは連なって、楽しそうに咲いている。

それは離れて見れば、大層大きな花と見える。

でも、ゆっくりと近づいていくと、違った。

それは、小さな花たちの集まりだった。

ぎゅっと皆で身を寄せ合って、大きな一つとなるのだから、何とも羨ましい。

しかも、一つひとつのそれらは、その一つひとつもがそれぞれに際立っている。

感情であるようにも見えた。

感情となんか呼ぶよりも煩悩、欲望と言った方のが、自分の感性に近いのかもしれない。

それなのに、如何にも立派である雰囲気を醸し出しているのだ。

自分なんかでは、到底敵わない。

でも、そう在りたい。

そう在りたかった、と悔やむ。

悔やんだところで、かえってくるものなど何も無い。

ただ、現在(いま)だけを必死になって生きているのだ。

後悔の数を、少しでも減らしていくために。

今、自分の目前で堂々と主張出来る彼らは、後悔なんてきっと無いのだろう。

紫陽花たちは。