【番外編 その1】
PlayBack Ⅰ―出会いには確かに意味がある―





咲宮 華は、天川中学1年A組の教室の一番窓側、さらに一番後ろ、自分の席にて読書をしていた。

いや、本を読むフリをしていた。

休み時間、いつも通りの光景である。

外の天気も6月には珍しく、雨天の合間に訪れた晴天であった。

日差しが身体に染み込んでいく、そんな天気の下で、軽い睡魔に襲われていた。

すると突然、華を囲む様に壁が出来た。

壁の様に迫ってきていたのは、「いじめっ子水川グループ」だった。

これも、もういつも通りの光景である。

華の正面にいた人物、水川が机の上の筆箱を乱暴に荒らしだす。



「何じゃこりゃ」



水川が手に持っていたのは、美術部の活動で使う、大きなねり消しゴムだった。

それは筆箱の中でなく、机の上に出して置いた物だ。

本当にたまたま先程の授業で落書きを描くのに使っており、出したままにしていた。

そのねり消しゴムが華の後方の人物に手渡される。

先生から貰ったため、華にとって大切な物だ。

言おうとはしないが内心では、返してほしい、と願っているに違いない。

しばらくすると頭上に、ほんの少しの違和感がした。

触れて見れば、見覚えのある残骸が手に付いてきた。

もう一度だけ言う、大切な物だ。

華の肩は小刻みに震え出す。

大勢の笑い声が響く教室のどこかでブチッ、と何かが切れる音がした。