つかわれていないビルの屋上。死ぬには最適の場所だ。つかっていないからって無闇に入り口の鍵を開けていちゃいけないよ、と思いながらたどり着く。

……でもそこには、先客がいた。

冷たそうなアスファルトの上に、ただひとりで座っている男の子。



「……っ、」



振り返った彼は、とても綺麗な顔をしていた。



顔立ちそのものもそうだけれど……表情も。

細められた目から、こぼれ落ちた雫。眉尻が下がり、中央は左右の上がっている角度が違う。

赤くなった鼻。固く結ばれたように、でも弱く震えた唇。