『交通事故に遭ったらしい』『左手の甲を何針も縫ったらしい』----学校で、皆が噂する声は自然と私の耳にも届く。聞きながら、私の心臓はキューッと苦しくなる。

 出会えた奇跡----今度こそ、私は貴方のことを見失わないようにしなくちゃ!
 
 
 ユウさん、あなたは独り占めする。

 私の好きで好きで溜まらない、貴方、カナタさんを。

 
 わたしは、誰を得たい。

 わたしは、欲するものを愛したい。

 愛したい……

 
 作業中にカナタさんのことを想う、私の手は止まる。そして、壁時計を見つめる。

 私の心、ここにあらず。

 その時だった----トントンと、教室のドアをノックする音に私は我に返る。扉の前に立っていたのは、大嫌いな奴だった。

 時刻は、17時前----


「王、授業ならもう終わったわよ」

「何、手は足りてるだろう

 生徒が増えると言う話はいったい
 いつのことやら」

「時期、増えるわよ」

「そうは見えないけど……
 
 何だい、このおもちゃの山は
 これは、色紙かい?」

「ちょうどよかったわ
 あなたも、ここの先生
 
 園児に渡すプレゼント
 袋に詰めるの手伝ってよ」

「園児、ああ、ワークショップ
 まだやってたんだな」

「今、紅茶淹れるわ、座って」