狭いベッドの上、横向きに眠る二人。実花さんは後ろから私のことをギューッと強く抱きしめて眠る。私は、こんな風に誰かに抱かれて眠るのは初めてで、ドキドキが止まない。

 貴女の寝息に合わせる息遣い、すると、だんだんと眠りにつけそう。

 夢うつつの中、寝返りを打つ私の唇に触れる唇----私達は、とろける程に甘いくちづけを交わす。

 それが例え禁断の実だとしても、自分以外の誰かが自分のことを、こんなにも強く求め、愛してくれる、それはなんて幸せなことなんだろう。

 わたしはあなたのくちづけを求め、あなたのいる世界で生きる。

 赤いネイルの指先に、私はそっとくちづける。

 
 明日も明後日も、明々後日も一緒に眠ろう。

 
 わたしはあなたを愛したい。

 そして、あなたに愛され続けたい。

 私達の愛は、どこへ向かうの?

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 眠る私の頭を優しく撫でてくれる、その手は止まる。

 眠っている私には、聞こえない声

 その声はあの日----電車の音にかき消された、あの声


「奇跡

 と言えば、そう、あの人に
 愛されていることも、また奇跡
 信じられない

 あなたばっかりあり得ない

 私の欲しいものが
 何でも手に入って、羨ましい」


羨ましい、妬ましい----すべて、奪いたい。


「ごめんね、ユウさん」


意思を持たない着せ替え人形は、自分が壊れゆくことにさえ気づかない。

ねえ、彼方----あなたは、わたしを助けてくれる?