「まひろが選んだのは俺と同じ公認会計士ではなく、兄貴がいるシャイニングだったんだ。まひろは俺よりも兄貴を選んだのか……信じらんねぇよ」

イチにぃが言ってたな、修がやけに突っ掛かってくるって。

「修、6年前に蘭さんと何かあったのか?イチにぃが気にしてたみたいだけど」

「俺よりも兄貴が好きだってな!男としてどっちかを選ぶなら兄貴を選ぶって……」

な、なんだって!?

「でも、それって6年前の話だろ」

修に言いながら自分に言い聞かせているのか、俺。

「ああ、解ってる。俺だってあの頃の俺とは違う。公認会計士として蘭事務所で認められたから、帰れるんだ。5年で帰る約束を守れなかったのは痛かったが、この1年で男としての完成度は増したはず。兄貴にだって負けるつもりはない」

かなり対抗意識を燃やしてるな、修。
しかし、イチにぃは言っていないのか?


「修、かなりヒートアップしてるところに水を差すようだけど、イチにぃには……女がいるぜ」

「は?何て言ったいま!?」

「だから、彼女がいるって言ってるんだよ」

「嘘だろ……?それってまひろなわけないよな。ことなかれ主義の兄貴が、まさかな…」

「同じシャイニングらしいけど。俺も詳しくは知らないから、あとは本人から聞けよ。蘭さんではないことは確かだから」

「兄貴、何で言わなかったんだ?そっか彼女できたのか…」

もしかして俺、余計なこと言ったか?

どっち道バレるんだから、いいよな。

「ライバルが戦線離脱してくれたなら言うことないか」

あ、そうだ。

肝心なことを教えてやらないといけなかったな。

今日俺が遥々やってきた意味がなくなってしまうところだった。

修が多分いちばん聞きたくないと思うであろう、真実を。

俺は修に伝えなければいけない。