「わ、悪かった。お前が面白い事言うから。逆だよ、逆。俺や修一がまひろに言い寄って困らせてるんじゃないかって。まひろが可愛くて仕方ないんだよ、母さんは」

「あ、え、そっち!?……よかった」

「昨日、俺も実家に帰ってさ。久し振りに家族4人揃って食事したんだ。母さんは修一が帰ってくることになって嬉しそうだけど、やっぱりまひろとのことを気にしてたよ」

「でも、シュウにぃとは全然連絡取り合っていないよ?」

「だよな。だから俺も油断してた。修一は相変わらず、俺や両親の前でもまひろのことばかり話すんだ。こりゃ、来月から思いやられる」

ん?ふっと私の頭にある疑問が浮かんだ。

「ね、イチにぃ。シュウにぃは向こうに行っている間に恋人は居なかったのかな」

だって、あのシュウにぃだよ?

『俺は本命以外の女とは付き合わない』

なんて、彼女を作らず特定の誰かと付き合うなんてなかったけど。

女の人がそんなシュウにぃを放っておく訳がなかった。
街で見かけると、いつも違う女の人を連れて歩いていたのを私は知っている。
私に見られていたとは夢にも思わないだろうな、シュウにぃ。

「え、そ、それはどうだろうなぁ……?なあ、翔」

「さあ?俺も電話で話したのは数えるほどだったし。本人に聞いてみればいいだろ」

佐伯主任の口調が仕事モードから、リラックスモードになってきているみたい。
タメ口だし、さっきも『イチにぃ』って呼んでたし。

これは、もしかして?
噂の……本音スイッチ入ってる状態!?

「蘭さん、修に彼女がいるのかどうか気になってるんだ。もしいたとしたら、ショック?」

「そんなことはないです。シュウにぃのことを理解してくれて、本気で好きでいてくれる女性がいたらいいなって思って」

私はそんな女性にはなれそうにないから。
ごめんね、シュウにぃ。