「だって、シャイニングの顧問は多田野先生じゃないの?なぜ父が」

私、就職する前にイチにぃに確認したわよね。
シャイニングと父が所長をしている"蘭会計事務所"に関わりがあるかどうか。
関わりはなかったはずじゃなかったの。

「俺も知らなかったんだ。直接の関わりはなかったらしいけど、多田野先生が病気療養されることになって、叔父さんを後任に勧めたって。そこまでは想定出来なかった。悪かったな」

「それはどうしようもないことだよね。イチにぃは悪くない。だけどどうしてまた、私に関わってくるの……」

母と父が離婚したのは10年前。
私が中学2年生の時だ。
その時から私は人生の岐路に立たされ、自分で決断してきたのだ。

その時に決意したのに。
もう父には関わらないで生きていこうと。
完全には無理でも、なるべく関わらずにいたいのに。
それなのに、どうして?

心が……沈んでいく……。

混乱する頭を抱えて視線を彷徨わせていると、佐伯主任と目が合ってしまった。
何も言わず、じっと見つめられている。
もしかして、ずっと私のこと見てたの……?

「あの、主任はどこまで知っているんですか」

「どこまで?蘭さんのお父さんのことなら、ザックリだけど課長から聞いた」

ザックリって。
イチにぃ、私の居ない所でなに勝手に話してくれちゃってんのよ。

「悪いなまひろ。顧問の就任とはまた別件で、蘭事務所から依頼がきたんだ。それを任せられるのは佐伯しかいないから、昨日担当者として蘭先生に紹介した。ある程度把握してもらった方がいいと思ったから、佐伯にも話をしたんだ。お前も嫌だろうけど関わりを持たざるを得なくなるからな。佐伯がいるから大丈夫だろ」

ちょっと……。
私も、関わりを持たざるを得なくなるって、どうしてなの。

「嫌よ!!あんな父と関わりなんて持ちたくない!!できることならもう顔も見たくないのに」