「でも、まひろんとそんな話ができるなんて。中学生の頃を思い出して懐かしくなっちゃったな。なんか、嬉しい」

確かにそうかもしれないな。
なつみんが入社してきて、最初の頃は避けていたもの、私。
昔の私を思い出すのがつらかったから。
もう過去は捨てて大人になったと思っていたのに、なつみんと会ったらあの頃に戻ってしまうようで怖かった。
だけど、なつみんはそんな私を放っておいてはくれなかったんだよね。
ホント、迷惑だなって思ってたよ。

私はあの頃とは変わってしまったのに、なつみんはほとんど変わっていなくて。
明るくて笑顔が眩しくて、キラキラしてた。
眩しすぎて目をそむけてしまった私だったのに、なるべく近づきたくなかったのに、逃がしてはくれなかった。
なつみんの明るさは、頑なな私の心にも光を届けてくれたんだと思う。
だからなつみんと一緒にいる時だけは昔みたいに笑っていられるんだ、きっと。
安心感っていうのかな?
心を許せる数少ない友達……親友って思っていいのかも。
面と向かっては照れるから言えないけど、なつみんには本当に感謝している。
私が素顔を曝け出せる大事な友達だから。

「ここで話せないんだったら、今夜久し振りにご飯でも食べに行かない?ゆっくり話したいな!」

「え、今夜?」
 
えっと今夜は誰が当番だったっけ?

確か今日は新の当番だけど、信と出掛ける用事があるからって私の明日の当番と替わるって言ってたよね。

「なつみんごめん。今日は晩御飯の当番なの。新と信が帰りが遅くなるからって、替わってたんだった」

「そっか。双子くん高校入学だったね」

私には高校生になる双子の弟、(あらた)(まこと)、それにもう1人小学生の妹(あかり)がいる。
私と双子の3人で晩御飯を作るのを当番制にしているのだ。
母も作れる時には美味しい料理を作ってくれている。

「じゃあ、明日でもいいよ!金曜日だし、土曜日仕事が入ってなければだけど。誕生日のお祝いで奢っちゃう!」

「いいの?嬉しい!土曜日は大丈夫、休みだよ。じゃあ明日……」

「ちょっと待った。悪いけど俺、明日は予定があって都合悪いから。うーんそうだな、来週!来週の金曜日にしようぜ。な、決まり!」

私もなつみんも、突然の乱入者をじっと見つめた。