──昼休み。

午前中、佐伯主任との打ち合わせでグッタリした私。
シャ食で列に並びながら、今日は何を食べようかとメニューを眺めていた。
このシャ食のメニューは豊富で、どれも美味しくてお手頃価格と評判がいい。
シャイニングの社員だけでなく一般のお客様も利用できるとあって、いつも昼休みは混んでいるのが残念なところだ。
列が進んであと5人ほどで注文の順番が回ってくる、というところで肩をポンっと叩かれた。

「まひろん!久し振りだね。私の分も一緒に注文いいかな?」

有田菜津美(ありた・なつみ)
経理部所属で私の後輩になるけど、実は同級生。

「いいけど、どれ?」

「私は"和風ハンバーグランチ"で。席取っておくね」

「なるべく近い所ね、なつみん」

「うん、わかってるよ」


なつみんとは、同じ中学で仲が良かった。
高校は別々だったし、なつみんは大学を出ているから私の方が4年先輩になるのだ。
中学だけでなく、小学校も同じ。
だから、なつみんは以前の私をよく知っている。
まだ無邪気で素直だった頃の私を。

菜津美→"なつみん"
まひろ→"まひろん"

そんな風に呼び合うことも、本当は恥ずかしくなってるけど。
この会社内でそんなに親しくできる人っていないし、なつみんだけには気を遣わずにいられるから、私にとって貴重な存在なのだ。

「はい、なつみん。和風ハンバーグね」

「ありがとう、まひろん。先輩にこんなことさせちゃって」

「私の方が若いから。なつみんは来月には24歳でしょ。私は23歳になったばかりだし。なつみんの方が人生の先輩だよね」

「あ!そう言えば誕生日だったね!!おめでとう、まひろん」

「うん、ありがとう。おめでたいかどうかは謎だけどね」