吊り橋までたどり着いたが、2人の姿はもう見えなかった。
その吊り橋の先に、展望台と休憩小屋が見える。
2人の居場所はあの小屋だろう。

この吊り橋、風が吹いたらかなり揺れそうだ。
高所恐怖症の蘭さんだったら、きっと1人では渡れないだろう。
走るのは無理だが、できるだけ急いで渡るしかないな。
しかし、歩くだけでもかなり揺れる 。
思ったように足が進まないのがやけにもどかしい。
気ばかりが焦るが、幸い距離はそんなに長くはないから、落ち着いて行こう。

長かったようで短かったような吊り橋をやっと渡り終え、小屋へと走る。
閉められた扉の外から、中の様子を窺ってみるが……静かだ。
物音も話し声も聞こえない。
2人は一体この中で何をしているのか?
ここまで来ておいて、黙っていても埒が明かない。
もうこの際だ。
俺は後先考えず、小屋の扉を勢いに任せ開いた。


"バンッ"

小屋の中には思った通り、修と有田さんが丸いテーブルを挟んで向かい合うように座っていた。

「やっと来たな、翔。遅かったじゃないか」

不敵な笑みを浮かべ、修が立ち上がった。
有田さんは緊張した面持ちで俺の方を見ると、今度は修の方へと視線を移す。

「修一さん……。もうそろそろ話してくれてもいいんじゃないですか?修一さんの言った通り佐伯主任も来ましたし」

なんだ、俺が来るのを待ってたと言うのか。

「修、お前一体何考えている?どうして有田さんをこんな所まで連れ出したんだ。イチにぃをわざと遠ざけたりして、目的は何なんだ。お前の狙いは蘭さんじゃなかったのかよ!」

「そう、まひろ。全てはまひろのためだよ。本当は俺が……この俺がまひろのことを守ってやりたいって思っていた。俺がまひろを幸せにしてやりたいって思ってたよずっと。小さい頃から、ずっとまひろのことが大切だったんだ……」