「なんで内緒?」

「いまは、まだ早いかな。とりあえず"M"作戦中は封印しておきます。いつ封印を解くかは、ノープランで」

思わぬ"ノープラン"返しに、吹き出してしまった。
それを誤魔化すように言葉を探す。

「それにしても、有田さんこそ平気なのか?その……"M"作戦だけど。従妹とはいえ自分の彼氏が、他の女の世話やいたりして」

本音では面白くないんじゃないのか?

「そんな一弥さんだから好きなのかも知れません。私もまひろのために何かできたら嬉しいし。それに、彼はちゃんと私に打ち明けてくれましたから。だから信じるだけです」

余計なお世話……か。

「それにしても、すごいですねこの大量のメロン」

後部座席を振り返り、メロンを眺める有田さん。

「乗せすぎだろ……修のヤツ」

霧島さんの実家は北国で、メロンの栽培をしているらしい。
大量に送られてきたからと、お裾分けで貰ってきたが、多すぎる。

会社の駐車場に車を停めると、宮本課長がこっちに向かって歩いてくるのが見えた。
なんか俺を睨んでる?
あ、助手席の彼女か。
蘭事務所に行ったのは内緒だったよな、誰にも。

「翔、お前直帰するんじゃなかったか?第一なんで菜津美と一緒なんだよ」

「有田さんはさっきそこで拾った。銀行の帰りとかで。で、メロンのついでに送り届けただけだけど」

「メロン?」

「俺もう行くから、会社で分けてもらっていいですか。霧島さんの実家からのお裾分けです。あ、俺の実家にも少し貰っていきますんで。ちょうど良かった、運ぶのお願いします課長」

「は?俺、メロンを取りに来た訳じゃ」

「課長、私が台車を借りてきますから!待っててくださいね」

「あ、おい菜津美」

有田さんが台車を取りに社屋に入ったのを見届け、宮本課長に問いかけた。

「……もしかして、バレてる?」

こんなタイミングよく来るなんて。
やっぱり侮れないな、宮本一弥という男。