どっどっどうして貴浩部長が?

『いい驚きっぷりだね。やっぱり僕の携帯番号登録してなかったんだ。誰か分からなくて出なかったんだろう?』

うっ、図星!

「それより貴浩部長どうして私の携帯番号を知ってるんですか!?」

私は教えた覚えがないのに、一体誰から聞き出したのだろう。

『ああそれね、実はさっき君の上司である佐伯さんと電話で話したんだよね。その時に佐伯さんに蘭さんの携帯番号を教えて欲しいって頼んでみたんだけど』

「佐伯主任に、ですか」

………どうして主任、私に無断で番号教えてしまったのだろう。
せめて教える前に私に連絡くらいしてくれてもいいのに。
信じられない……。

『蘭さん今日は代休なんでしょ。土日にセミナーなんて大変だったね。僕も今日は休みなんだけど、よかったらデートしない?』

「………は?」

『ほら、前に話しただろ?蘭さんを連れていきたい場所があるって』

「あ、確か"S・Factory"って文房具メーカーの……」

『そうそう!今日ちょっと会合に呼ばれてて。僕が相手できなくても案内する人くらいいるだろうし。見学だけでもどうかな』

突然過ぎるよ、貴浩部長。

「申し訳ありませんが、今日は午後から母と外出する予定ですので。また機会があればお願いします」

『そう、残念だけど突然誘ったから仕方ないね。それじゃまたね。お母さんと良い休日を!』

「すみません、失礼します……」

はぁ、ほんのちょっと話しただけなのに、疲れた。

「まひろ?電話してたのね。ねえ、たまには外でランチしようか!早めに出ましょ」

「うん、いいよ」

お母さんと、久しぶりの外食。
まだ私が子供だった頃に連れていってもらった、思い出のレストランで。