「まひろんなら聞いたとしても本気にしないと思いますよ」

「まあ、とりあえず噂は無視していいだろう。翔、蘭事務所での打ち合わせはどうだ」

「進捗状況なら、逐一報告してるじゃないですか。順調ですよ。蘭さんも最初はガチガチに緊張してたけど、大丈夫です。俺がついてますから」

「いま話してるのは"M"作戦だぞ。修一の様子は?まひろに何か言ったりとか、変な動きはないか」

「特には。俺が気になってるのは修の助手のほうですけど」

霧島(きりしま)美生(みお)……。

あの女はなにか独特な雰囲気を漂わせている。

「珍しいな、翔がそんなこと言うなんて」

「勿論"M"作戦の一環としてですが。霧島さんはシャイニングにも時々来てるようだし」

「はい。経理に蘭先生が来られるときは、霧島さんが先生のお供として来られる事が多いです」

「そういえば、シャ食で食事した時にいろいろ聞かれたな。まぁ世間話程度だったけど」

嫌な予感するけど、気のせいだろうか。

「修一が帰ってきて1ヶ月。アイツが行動をまだ起こさないのは、俺たちを油断させようとするためだ。水面下で密かに動いてる可能性もあるから、気を抜かないようにな。まひろを守るための"M"作戦だからな」

それはそうかもしれないが、過保護過ぎじゃねえか?

「ところで翔、とある消息筋によると、お前なかなか大胆な行動取ってるらしいけど。ちゃんと"協定"守ってるんだろうな」

「ああ、勿論だ。そっちこそどうなんだ?そもそもこの"協定"俺にかなり不利だし」

だいたい『とある消息筋』って誰だ。
多分アイツだろ……蘭信。

「俺は守ってる。だけどもしもこの"M"作戦が長期戦にもつれ込んだとしたら、守りきれる自信がない……」

「それなら短期決戦で決着つけるしかないだろ」

でもこればっかりは、修がアクション起こさない限りこっちから行動を起こす訳には行かないからな。

「時が来るのを待つしかないが、そう遠くないはずだ」

そう願うしかないな。
受けて立つ心の準備は整ってるから、なるべく早く頼むぜ、修。