あ、でも平日はほぼ毎日送っていくから、外までなら勝ってるな。
……なんの勝負だよ。

はあ、夜な夜な課長と主任の密会なんて噂だけはゴメンだな。
気が進まないが行くか……。


「おぅ、遅かったな翔」

「お疲れさまです、佐伯主任」

「……お疲れさまです」

「翔~。まひろの手料理、美味かったか?」

「………何で知ってるんですか!」

多分、犯人はアイツだろう。
だいたいの見当はついてる。
アイツはイチにぃの子分確定だ。

「せっかくノーザンで早くから始めようとしてたのに、もうこんな時間じゃねえか」

「有田さんのために、気を利かせたんですよ。それで、今日は?」

俺たちが集まって話し合うことといえば、例のアレに決まっている。

その名も、"M"作戦
(命名・宮本一弥)

『まひろ、の"M"?』

思ったことを素直に口にしただけなのに、バシッと叩かれた。

『協定違反!お前は"まひろ"って呼んだらダメだろ』

『呼んでねーだろ!いないんだし』

『心の中で呼んでいるだけで十分違反だ』

………呼んでねーよ。
心の中でも未だに『蘭さん』だよ。
これでも自制心が強いんだ俺は。

「あの。これ"M"作戦と直接関係があるか分からないんですけど……」

「どうした菜津美。なにか気になることでもあるのか?」

イチにぃは有田さんを『菜津美』って堂々と呼ぶんだもんな。
不公平じゃないのか?

「まだ消えてないようなんです。あの噂」

あの噂……?

「噂って、この前言ってたアレか」

「はい。宮本課長と佐伯主任ができてるらしいっていう噂です。シャ食や経理部でも、話題になってます」

「よく2人で一緒にシャ食行くけど、そのせいか?」

「はい。同じ部署だし一見自然に見えるんだけど、堂々としているところがかえって怪しいとか。宮本課長を見つめる佐伯主任の、真剣な眼差しが熱すぎるとか」

なにもやましいことがないから堂々としているんだろ。
かえって怪しいとか……意味不明。

「なぁ、菜津美。その噂、まさか知らないよな?まひろは」