また褒められた!

「良かったです!早起きした甲斐がありました。もしかして私、主任の胃袋ガッチリ掴んじゃった感じですかね」

『調子に乗るな!』とか
『100万年早い!!』とか
言われちゃうかな、ははは。

「……ああ、掴まれた」

………え?主任?

「できれば、毎日でも作ってほしいくらいだ」

……え、それってどういう意味?

私の手を握りしめている主任の手に、更に力が込められた。
ちょっと痛い。
何か思い詰めたような、苦しそうな表情を浮かべている主任を見て、胸が締め付けられるような気がした……。

「俺、いま蘭さんに物凄く言いたい台詞があるんだけど。今はまだ、言えない……」

え、何を、主任は私に何を言いたいの?

「佐伯主任、どうしたんですか」

主任のこんな姿、見たことがない。

「蘭さん。俺のことを意気地無しだと、笑うか?……男らしくないな、俺」

主任…………。

「そんなこと、ありませんよ。だって今もこうして手を握って、私をしっかり守ってくれているじゃないですか」

佐伯主任がそばにいてくれたら、怖いものなんてない。

「父と偶然会ってしまった時も、助けに来てくれたじゃないですか」

いつも会社から家まで送ってくれるのも、守られているんだよね。

「男らしくない、なんとことありません。例え回転系の乗り物が苦手だったとしても」

コーヒーカップ、いつかは一緒に乗ってくれるかな。

「いま言えないんだったら、いつか言ってくださいね。私その時までずっと待ってますから」

だって私たちってまだ付き合い始めたばかり。
初デートなんだもん。
焦らなくていいんだよね。

「だって私、佐伯主任のこと……」

突然、なんの前触れもなく、塞がれた唇。
これって何回目のキスなんだろう……。

始まったばかりの関係にしては、キス率が高いような気がするのは私だけなのかな?
ほら、だんだん思考が溶かされていくのが分かる。
主任と交わすキスが、主任のことが、大好き……。
素顔の私が心で叫んでいた。