「そんな深刻そうな顔しないでくれよ。見たこと誰にも喋ってないし。俺の他には誰もいなかったし。ああそう言えば近くに車が1台停まっていたけどな」

「その車なら、俺も気付いてたから大丈夫」

気付いてた?
見られてるのを気付いてて、あんなことしたって言うの!?

「姉貴もいい大人だし、翔さんが相手だし、俺はもう何も言わないよ。……翔さん、まさかもうアレより先に進んで…」

「ちょっと新!いい加減に……」

もう、ヤダヤダヤダ。
あかりも、お母さんも興味津々で聞いているし!

「まだ、それ以上はナイから。今のところはな」

主任も主任よ!
何を真面目に答えてるの。

「だって、約束させられちまったからな。……小舅に」

え?約束?小舅?
頭がショート寸前で、軽くパニックだ。

佐伯主任とのキス。
アレを、新に見られていたなんて。
穴があったら入りたいよ……。

「さあさあ!ケーキ食べましょ。佐伯さん、まひろの手作りケーキは絶品だから、どうぞ召し上がれ。今日も気合い入れて作ってたのよ。まるで勝負でも挑んでいるみたいにね」

「もう!お母さんまで……」

なんてこと暴露してくれてるの。

「じゃ蘭さん、戴きます」

最初の一口を食べた時の様子を……ガン見。

「……蘭さん、そんなに睨むなよ。……………うまっ!」

いま、なんて……?

「これは、絶品と言われるだけのことはある。この前のパウンドケーキも美味かったけど、俺はこっちのチーズケーキの方が好きだ」

好き?
佐伯主任が今『好きだ』って……。

チーズケーキがね。
あれ、なんか引っ掛かるんだけど。

「な、言っただろ?この前のパウンドケーキより、チーズケーキがいいって。俺を信じて良かったな!姉貴」

「おねぇ!私も作りたい!今度教えて~」

あかりも、好きな男の子にあげたいのかな。
小学生のくせに、ませちゃって。