目覚ましよりも早くオレの睡眠を邪魔する者がいる。サナだ。
行きもドタバタなら帰宅も負けじと劣らずドタバタして帰ってきた。ガチャと玄関を開ける音から焦っているのがわかる。知らぬふりをきめもこむためにオレは寝たふりを続ける。

サナは部屋に入るなり、部屋の片付けを始めるかと思っていたが、オレの目論見は大きく外れた。サナはベッドに寝ているオレの顔を覗き込む。サナの影が閉じた瞼の上からでもわかる。

「起きてるでしょ?」とサナは言いながらオレの体を揺さぶる。

起きていないと寝たふりを続ける。何を言われるかわかったもんじゃない。

「起きてんの分かってるんだから、アイルが寝てるとき、壁の方、向いて寝るんだからね」