顔をしかめてそう言う亜沙美。


立場が悪くなったから話題を逸らそうとしているに決まっている。


そう思いながらオカズの野菜を口に運んだ。


その瞬間、口いっぱいに妙な味が広がって行き、思わず吐きだしていた。


「ちょっと、なにしてるの!?」


隣の瞳が驚いて声を上げている。


「ごめん……。でも、本当に変な味だったから」


あたしはナプキンで机を掃除しつつ、そう言った。


今まで食べたことのないような、妙な味だったことは確かだ。


「やっぱり変な味だったよね? ここのご飯時々こんな味にならない?」


亜沙美にそう聞かれてあたしは記憶を呼び戻す。


そう言われてみれば、今までもちょっと変な味を感じたことがあるかもしれない。


あたしは恐る恐る魚に手を伸ばしてみた。


シャケのムニエルだ。


勢いよく口に運んでみると、美味しさが広がって行く。


「ん……こっちは普通に美味しいよ」


「本当に?」


「うん」


試にもう一度野菜に手を出してみると、今度は普通に美味しいドレッシングの味がした。


「さっきのはなんだったんだろう……?」


あたしは首をかしげて、そう呟いたのだった。