「冗談だよな……?」


先輩たちから解放された優歩がようやく身を起こし、そう呟いた。


相変わらずカヤ先輩は拘束されている瞳へアイスピックを向けている。


「冗談? どうしてあたしが冗談を言う必要があるの?」


カヤ先輩はほほ笑みながら首を傾げた。


その笑みには感情が含まれていないように見えて、寒気がした。


「冗談じゃないなら、これは悪い夢だ」


現実逃避を始めた優歩は、自分の頬を叩いて夢から覚めようとしている。


それを見て、先輩たちはおかしそうに笑い声を上げる。


「夢じゃないんだよ優歩!」


そう叫んだのは友樹だった。


骨を折られた痛みで時折意識を失いながらも、今はしっかりと優歩を見ていた。


「友樹……。お前のそれだって、ただの演技だよな? 亜沙美だってそうだ。大やけどなんて、絶対に嘘だ」


ブツブツと自分に言い聞かせるように優歩は呟く。


「自分の目を潰す勇気がないみたいね」