教室から出る時も、階段を上る時も、その子は俺に何かを言っていた気がする。





けど、ちゃんと聞く余裕すらなくて…
いつもの空き教室に入った瞬間、思いっきり抱きしめた。





「わっ!!!」






いつもと髪型が違うから、花莉のツインテールがさらりと俺の頬に当たる。





花莉の髪は柔らかくて、甘い匂いがふわりと漂った。





「……反則」





…この子はどれだけ俺に惚れさせれば気が済むのだろうか。




…可愛すぎんだろ。





腕の中で硬直したままの彼女は、「…へ?」と小さな声をあげる。





どうやら意味がわかっていないようだ。





「可愛すぎなんだよ」





そう言うと、やっぱり彼女は「…へ?」と小さく声をあげる。





そして、ぎゅっと俺のシャツを掴んだ。