「行こ」
ぐいっと詩優に手を引かれる。
無意識に足を止めて上を見上げていたことに気づいた私は詩優について行くけど…。
「ここは…どこ?」
“HEARTS HOTEL”から歩いて5分もかからなかった気がする。
「別館」
さらりと答えた詩優。
だからつい、あぁそうなんだ、と思いそうになったが
「別館!?」
それって、凄いことだよね!?
っていうか何回かHEARTS HOTELには来たことがあるけど、別館の存在を初めて知ったよ!?少し遠くから見たことはあったけど…てっきり他の建物だと思ってたし……。
どんどん手を引かれて歩いて、中へと入る。
キラキラと輝くタイルの床を歩いて、1階のとある大きな扉の前に誰かが立っているのが見えた。
その男性は私たちに気づいて、優しい笑顔を向けて。
「社長は少し手が離せなくなってしまってね。隣の部屋で待っていてもらってもいいかい?」
優しそうな男性だと思った。
黒髪で黒縁のメガネをかけた、スーツを着た男性。



