「妃芽乃様、詩優様のお父様がお呼びです。少しお時間いただいてもよろしいでしょうか?」




学校から帰ってマンションに戻ったところ、私に声をかけてきたのは…
宮園さん。





エレベーターで上まであがったら、部屋の前に宮園さんがいたんだ。
詩優は『親父と話つけてくる』と言ったまま帰ってきていないから…最悪なことに今は私1人。






「…えと……」





緊張で声が震えてしまう。
詩優には、『宮園に近づくな』と言われているし、私だって宮園さんに嘘をつかれたばかりであまり近づきたくないと思っていたから。





…っていうか、今……詩優のお父さん…って言った?






宮園さんと目を合わせると、






「詩優様のことで話したいそうです」






にこりと笑った宮園さんに少しゾクリ、と背筋が凍りそうになった。
冷たい笑顔のような気がしたから…。







…本当は行きたくない。
行っては行けないのかもしれない。








けど…
私も詩優のお父さんと話したいことがある。









だから私は、こくんと頷いて宮園さんについて行った。