花莉は抜け出すことを諦めたのか、急に大人しくなる。




かと思えば、いきなり俺の背中に手を回してぎゅーっと強く抱きついてくる。




……それは反則じゃね?
心臓がドキドキドキドキと早鐘を打つ。





…これじゃ花莉に聞こえちまいそうだ




「…大好き……」




呟くように聞こえてきた声。




「俺も」




思わず声が出た。言ったあとに少し後悔。
だって俺は、寝たフリをしていたのだから…




「…へ?……起きてた…の…?」




花莉は俺の背中に回した手を解いて、見上げてくる。




「……ごめん。起きてた…」




俺がそう答えると、花莉の顔はみるみる赤くなっていく。




「…っ…ひどい!!!起きてたなら言ってよっ!!!!」




ぽかぽかと俺の胸を叩くけど、全然力が込められていないから痛くない。




仕方なく花莉を抱きしめていた手を解くと、花莉は逃げるように起き上がって走り去って行った。