でも、時折全てを悟ったような、達観した意見を述べることがあるのは、煉が永い(とき)を生きてきた証そのものなのかもしれない。

「だが、どうやらそれも終わりを告げたらしい。人を……心から大切に思う誰かを見つけ、愛した時、俺の不死身の効力は消えるようになっていたらしい」

「大切な人……」

「そう、つまり。……お前のことだ、さくら」

 煉の嘘偽りのない瞳が、さくらを真っ直ぐに見据える。

 本来ならば込み上げる嬉しさで、我を忘れて煉に抱き着いていたかもしれない。しかし、寸でのところで、その思いを踏み留める。

 素直に喜んでいいのか、解らなかったからだ。

 ずっと、ずっと。

 煉はたった独りで辛く苦しい思いをしながら生きてきた。

 それはきっと、私の想像を絶するくらいの人生だったのだろうと思う。

 だからこそ、大切な人だと告げられても、さくらは手放しでは喜ぶことが出来なかった。

 苦しかったよね。辛かったよね。って、そんな風に軽々しく言えるようなことではないことくらい、理解していたからだ。不謹慎という言葉がさくらの胸を突く。

 煉は今にも泣き出しそうなさくらの表情を一瞥して、優しく慰めの言葉を掛ける。

「お前が悲しむ必要はない。俺はこうして、さくらのお陰で今も生きている。……お前に出逢わなければ、俺は未だ永遠に不死身の呪縛から解放されずに、ただ堕落して生きていたに違いない。本当に感謝している」