不死身の俺を殺してくれ

 平成も終わり新な元号を迎えた時代に、未だこんな壮絶な人生を歩んできた人間がいるのかと、にわかには信じられなかった。しかし、煉は至極真面目に語っている。

 その姿は嘘をついているようには、とても見えなかった。

「だが、その老夫婦もまた、重い病に冒されていた。俺がいなければ、本当は薬の一つでも買えたはずなのに、そうはしなかったんだ。

 今日明日の食べる物を見繕うのにも苦労していたはずなのに。そして、そんな日々は長くは続かなかった。

 老夫婦が亡くなった後、俺はまた独りになった。食べる物を盗み、繰り返しては生き長らえていたんだ。……引いてるよな、当然だ」

 煉は自嘲し、さくらの様子を窺う。

「……引いたりなんか、しないよ。続けて。煉のことを聞かせて」

 さくらは首を左右に振り、煉の話の続きを促す。

「そうか……ならば話を続ける。そして、何年か月日が流れた頃、俺は、とある事に巻き込まれたんだ。

 生死の狭間をさ迷い、もう駄目かもしれないと意識を手離しかけたとき、一人の男に命を救われた。だが、それは俺にとっては地獄の始まりに過ぎなかったんだ……」