不死身の俺を殺してくれ

 さくらの声が聞こえた。

 煉は何度もさくらの問い応えようとしたが、身体の自由が利かず、あまつさえ意識すらも自由に出来ずにいた。

 さくらの声が聞こえているのに、泣いているのに、俺は応えることも、その涙を拭うことも出来ない。悔しさと苛立ちで心がささくれ立つ。

 どうして、この身体は突然不死身ではなくなったのか。自身に問い掛けてみても答えは返ってこない。不死身が永遠に続く保証なんて、最初から無かったはずだ。

 それなのに、勝手に過信して甘んじていた。だから、この結果は完全に俺の落ち度だ。

 ここで命の(ともしび)が消えてしまうのなら、せめて最後にさくらと話がしたかった。

 あんな風に、さくらを泣かせたくはなかった。さくらには、どんな時でも笑っていて欲しかった。

 でも、もう、何もかもが遅すぎたのかもしれない。

 無意識に流れ落ちる煉の涙は、目尻を伝い、消えていく。

 煉が諦念し、再び意識を暗闇へと手離そうとした時だった。何処かで聞いたことのあるような、抑揚の無い男の平淡な声音が脳裏に直接響き渡る。