「今日のお弁当、すごく美味しかったです」
「そうか。なら作った甲斐があったな」
会社から帰宅したさくらは、煉と二人で夕食を囲みながら、煉が作ってくれた弁当を絶賛していた。
さくらに褒められた煉は、嬉しいのか、満足げな表情で頷く。
「唐揚げも手作りですよね? 味がよく染み込んでてビールに合いそう……じゃなくて、炊きたてのご飯と食べたら幸せだろうなぁ~と思いましたよ」
「当然だ。味付けの仕込みは前日に済ませ、さくらが出勤する時間を考えて当日に揚げたものだからな。……仕方ない、今日はビールをいつもより一本多く追加しよう」
お弁当を作って貰って感謝してるのは私なのに、煉すごく喜んでるみたい。その理由がよく分からないけどビール一本追加されたから、うん良しとしよう。
上機嫌というのはこういうことを言うのかとさくらは胸裏で感心しながら、煉の嬉しそうな顔を眺める。
普段は無表情な煉が、時折溢す子供のような笑顔は破壊力が未知数で、慣れてきたさくらでさえ、未だに胸が高鳴ってしまう。
そこで、ふと思い出してしまった。今朝のことを。途端に胸の高鳴りが別の意味へと変化し羞恥が戻ってくる。
理由を聞いてみたいが、さくらには生憎その勇気がない。
お酒引っかけたら、何とかなるかな。でも、別に深い意味はないって言われたら、それはそれで何となく複雑だし……。
結局、さくらは一人、胸裏を燻らせながら食事を続けていた。
◇
おそらく煉は今、後悔をしているに違いない。やはりビールを追加しなければ良かったと。
いつもは缶ビール二本の所を、今日は煉の好意により普段より一本多く追加されたさくらは、目下、見事なまでに酔っ払いへと仕上がっていた。
酔うと何故か距離感が狭まるさくらに、煉はどうしようもない焦燥感を感じる。
「ねぇねぇ、煉。一つ聞いてもいい?」
「……な、何だ?」



