「またか……くそっ」

 悪態をつきながら血まみれの身体を引き摺り、夜の闇に紛れ消えていく男。

 煉《れん》という男は、先ほど道路を横断している最中《さなか》に、猛スピードで車道を走行していた自動車に派手に追突された。

 その身体は勢いよく宙に舞い上がり、その勢いのまま硬いアスファルトに身体を強打する。全身が砕けるような感覚に、吐き気が込み上げた。

 今度こそ、死ねるかもしれない。

 少しの期待と、いつもの諦念感が脳裏で交差する。

 だが結局、煉はまた死ねなかったのだ。

 不死身と言えど痛覚はある。それこそ、気が狂うような痛みを味わったことだって、一度や二度じゃない。

 なのに、それでも煉は死ねない。

 この辛さは、独りで永遠の時を過ごす辛さは、誰にも理解出来ないだろう。

「……うっ、ぐ……」

 口内に血が溜まり不快感に耐えきれなくなり、道端に思わず吐き出してしまう。

 ああ、何ヵ所骨が折れてるんだ。これは……。

 しばらく仕事は無理そうだなと思考する。

 いや、その前にこんな状態じゃ、もう仕事場には行けないか。また新しい仕事を探さなければいけないな。

 全身の痛みで意識が途切れ始める。
 アパートに戻る体力は、すでにない。

 煉は仕方なく人気のない路地裏に身を隠し、一晩を明かすことに決めた。