突然に始まった煉との奇妙な同棲生活は、さくらにとって、どんな日々だったのだろう。

 約三ヶ月程の間、共に暮らしてきたというのに、改めて、そのことをさくらに訪ねる機会は今まで無かったかもしれない。

「それは、俺も同じだ。身近にあるものほど、有り難みを忘れる」

「うん、本当にそうだよね。無くしてから後悔したって、もう遅いし。限られている命なら尚更……。だから、あの時、心から後悔したんだよ。

 意識が戻らない煉を見る度に、どうして、もっと早く言わなかったの? 言えなかったの? って。失ったら伝えたいことも、伝えられなくなるのにって、だから。だからね──」

 煉に後ろから抱きしめられているさくらは、振り返り、見上げる。その瞳は、まだ少し涙で潤んでいた。

 目蓋を閉じて一呼吸を置いた後、さくらはゆっくりと目蓋を開いて、胸に秘めていた煉への想いを告げた。

「私、煉のことが好き」