安西部長はベッドから立ち上がると、徐に浴衣を脱いで着替え始めた。後ろ姿だったけれど、ほどよくついた筋肉に目を奪われる。

昨日……あの身体に抱きしめられたんだよね? って、ああ、朝から何考えてるんだろ。

「私、朝風呂に行ってきます!」

丸テーブルの椅子に置いた自分の荷物のところへ行くと、弾みでテーブルから安西部長のマウスが転がり落ちた。

「わっ! すみません! ん?」

マウスが落ちた拍子に安西部長のパソコンが立ち上がる。書類の下書きのようなものが画面に映し出されてふと目がいくと、それは一日目の視察で安西部長なりにまとめたポイントがつらつらと並んでいた。

これ、もしかして私が報告書を書きやすいようにしてくれてる?

作成日時は午前二時となっている。

こんな時間まで仕事してたんだ……。

それなのに、私は彼の言葉に甘えてぐっすり寝入ってしまった。部下として罪悪感が湧く。

「おい、あんまり人のもんジロジロ見るなよ」

「すみませんっ」

ハッと我に返って画面に背を向ける。

「グズグズすんな、風呂に行くなら早く行ってこい。お前の大好きな食事の時間に遅れるぞ」

「あ、はい!」

安西部長に悪い事しちゃったな……その分、今日一日頑張ろう!

私は大浴場に行く支度をすると部屋を出た――。