冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

翌日。

失恋のことなんてさっさと忘れよう。健一のことなんて忘れよう。と一心不乱に昼休みも返上して私は一日中仕事に没頭した。

時刻は二十二時。

総勢二十人いる広報部の社員たちは全員帰宅したようで、気がつけばしんと静まり返ったオフィスには誰もいなくなっていた。ブラインドの隙間から都会の夜景がチラッと垣間見える。

すっかり遅くなっちゃった! そろそろ帰ろうかな。

視察に使う資料は明日確認するとして……。

パソコンの電源をオフにし、デスクの上を片付けていると。

「瑞穂」

不意に後ろから声を掛けられて振り向く。そこには、外出から帰ってきた健一が複雑な表情を浮かべて立っていた。

彼とは昨日の結婚報告からひとことも口を聞いていない。仕事が忙しくて話す暇もなかったというのもあるけれど、なんとなく気まずい雰囲気が流れる。

「なに?」

私の素っ気ない返事に健一は眉尻を下げた。