せっかく気持ちよかったのに、なんか嫌な気分……おかげで昔の失恋まで思い出しちゃったじゃない。

自販機の前で悶々としながら炭酸飲料のボタンを押す。ガランと音を立てて排出口からペットボトルを取り出したとき、不意に人の気配を感じて顔をあげると……。

「こんばんは。ほんと君とはよく会うね」

どこかで飲んできたのか、少々ほろ酔い加減の佐々岡さんがにこりと私に微笑んで立っていた。

「……こんばんは」

私は先ほどのこともあって、なんとなくぎこちない笑みを返す。

「どうしたの？　ご機嫌斜めって感じかな？　さっきはごめんね、茶化すようなこと言って」

「いえ、謝るなら安西部長に言ってください。じゃあ失礼します」

ご機嫌斜めなのは佐々岡さんのせいです。という言葉をぐっと堪える。

あんまり佐々岡さんに関わりたくない。すぐ横を通り過ぎようとしたとき、佐々岡さんに腕を掴まれて、その拍子に手にしていたペットボトルが抜け落ちて床に転がった。