「曲がったことが嫌いな性分は私も同じです。もし、私が安西部長だったら……きっと同じことをしていたと思います。だから、気持ちがわかるというか……」

うまく言葉にならない。自分の言いたいことも満足に伝えられなくて歯がゆい。全員が安西部長のことを否定したとしても、私だけは……違う。そうわかって欲しかった。

「気持ちがわかる? お前に? どうして?」

訝し気に細められた彼の目から、口先だけの慰めならいらない。という拒絶の念が伝わってくる。胸がチクリとしたけれど、きっと言葉にしないとわからないことだってある。

「安西部長の仕事に対する姿勢は、人柄が出ているんです。真面目で、完璧で、どんなことにも前向きで……。正直言うと安西部長って厳しいし仕事馬鹿だし、融通利かなくて頑固で苦手でした」

「おいおい、ひどい言われようだな、俺をそんなふうに思ってたのか?」

私のぶっちゃけた発言に安西部長が面食らう。怒られるかも……と思いつつ、それでも話を続けられたのはお酒の効果もあったけれど、それだけじゃないような気がした。

「社会人一年目でまだ学生気分の抜けない私に厳しくしてくれたからこそ、甘ったれた気持ちもおかげで叩き直されました。だからきっと今があるんです。私、安西部長が間違ったことをしているなんて思ったこと、一度もありませんよ」

心の底から彼を信じている。だから、私のことも信じて欲しい。そう思うのは勝手なご都合主義だろうか。

「まいったな……」