「翌日、俺に下された辞令はもう閉鎖するのがわかってる地方営業所への転勤だった」

「え……転勤?」

転勤とはいえ、それは体のいい“左遷”だ。「左遷ってことですよね?」と喉まで出かかったけれど、私は敢えて口にはしなかった。

「俺は告発した上層部のやつらの選択を誤った。辞令を食らったとき、そいつらも上司とグルだったって、そのときわかったんだ。結局、汚職は社内で秘密裏に揉み消され、火種となった俺は“不祥事を起こした”とでっちあげられてゴミ箱行きってわけだ」

「そんな、ひどすぎます!」

信頼していた上司を告発するのでさえ、きっと悩んで心の中で葛藤したはずだ。自分の正義を貫いた結果、彼を待ち受けていたのは左遷という仕打ち……。

「安西部長がそんなことするはずないのに、みんな信じてくれなかったんですか? 営業部のエースだって言われていた安西部長の左遷を、誰も止めてくれる人は――」

「そんなやついねぇよ。誰も信じなかった。というより、上層部からすでに丸め込まれてたんだろうな」

自嘲気味に笑う彼を見て、私は胸が張り裂けそうだった。