冷徹御曹司と甘い夜を重ねたら、淫らに染め上げられました

公私混同はもってのほか。そう自分に言い聞かせるけれど、失恋の痛手も癒えないまま健一とふたりで……というのはやっぱり気まずい。はっきり言って仕事に集中できるか自信がない。

「ふぅん、そういう気概は嫌いじゃない。けど、仕事に支障が出るのは困る」

安西部長はいい加減に見えて仕事にはすごく厳しい人だ。私が新入社員だった頃は何度も失敗しては怒られた。けれど彼の言っていることはいつも的を得ていて筋が通っている。それに以前、取り返しのつかないようなミスをしたときも、安西部長の機転によって助けられたことがあった。苦手だけど、仕事では尊敬できる上司だ。

仕事に支障が出るのは困る。というのは一見冷たい言い方のように聞こえるけれど、私の動揺しやすい性格を知っての言葉だということもわかる。

安西部長は部下のことを見てないようで実は裏の裏までよく見ているのだ。

仕事に支障が出るのは困る。そう言われて返す言葉も見つからず、しばらく黙っていると安西部長が「うーん」と考え込むように唸ってから徐に前髪を掻き上げた。

「視察、俺と行くか」

「えっ?」