もう、こういうところがなければなぁ……。

ガクッと肩を落とし、私は気をと取り直して再び箸を進めた。

「あんまり食い過ぎて腹壊すなよ?」

そうこうしているうちに、見ると安西部長はほとんど食べ終わっていた。

「私のお腹、結構頑丈なんで心配無用です」

「食い意地張りすぎ」

「美味しいものなら意地も張りますよ」

私がプイッとすると、安西部長はビールを飲みながらクスクス笑った。

こんなやり取りをしていても嫌な気はしない。むしろ楽しいとさえ思う。

安西部長とは部署の飲み会などで一緒に食事をしたことはあるけれど、こうしてふたりきりなのは初めてだ。緊張して食事にも手がつかないなんてこともなく、気を張らずに自然体でいる自分が不思議だった。

「食い終わったら部屋で早速仕事するぞ」

「はい! あ、そういえば、今回の視察以外にもほかに仕事があるって言ってましたけど、もし、私に手伝えそうなものがあれば言ってください」

私の申し出が意外だったのか、安西部長が一瞬驚いた顔をした。いつものように「おう、頼むぞ」なんて言われるのかと思っていたのに、彼の表情はなんだか硬い。