社会人になってからあまり運動する機会もなくなって、旺盛な食欲だけは変わらずムッチリしてきたのは否めない。

身体を動かすことが好きで、スポーツ少女だった頃はそんなふうに言われても気にならなかっただろうけど、社会人になってそれなりの年で“ムチムチしてる”“いい感じに筋肉がついてる”なんて言われたって嬉しくないし!

「テニス部だったんです。全国大会にも行ったことあるんですよ」

これは私の小さな自慢だ。いい気になって鼻先をツンと高くする。

「へぇ、それはすごいな」

安西部長はグラス片手に頷きながら興味深そうにしている。どんな練習をしてたんだ?とか、思いのほか話に食いついてきた。

スポーツの話、好きなのかな?

それに彼は超有名な難関国立大学出身だということも聞いたことがある。

ラグビー部かぁ、どうりで体格がいいと思ったんだよね。胸板も厚いし、腕も太いし、背も高くて、頭脳明晰……それに顔立ちだって整ってる。

こういう人のことを非の打ち所がないって言うんだろうな……。

「お前はほんと見てて飽きないな。ポカンと口開けて、ほら、ここにいる金目鯛みたいな顔してるぞ?」

ハッと我に返ると、安西部長がツンツンと金目鯛を指さして笑っている。