一難去って私たちはホテルへ向かって歩いていた。

「そういえば、安西部長ってすごく子どもに慣れてる感じしましたけど……」

「ああ、兄貴の娘がちょうどあのくらいの歳なんだ」

ただでさえブスッとしてるときの安西部長は私だって怖いのに……香奈ちゃんは平気だったのかな?

「意外って顔してるな」

「否定はしません」

「正直なやつ」

口の端を押し上げて笑う安西部長が私の頭にポンと手を載せる。

「女が簡単に泣き顔みせるな、だなんてキザ過ぎません? 子どもに言ったって……」

彼の手の温かさが照れくさくて、そんな憎まれ口がぽろっと口をついて出る。

「あんな小さなガキでも、たまに大人顔負けのことを言うんだぞ? 姪っ子なんて『光輝おじちゃんと結婚したい! だから、早く大人になるの、私を大人にして』ってせがまれて叔父さんもタジタジだ」

安西部長が声を立てて笑っている。こんなふうに笑う顔も、なぜかいつまでも見ていたくなってしまう。

「お前だって、いつまでもガキだと思ってたら――」

「え?」

「いや、なんでもない。お前はガキよりも手がかかるって言っただけだ」

そんなぁ、手がかかるなんて……心外なんですけど!

「あ、あの! 私は子どもなんかじゃ……」

ぎゅるる~。