「ほら、また垂れてきてるぞ」

「え? あっ」

アイスクリームを持つ手を掴まれたかと思うと、安西部長がいきなりペロリとそれを舐めとった。

「うまいな」

一瞬、安西部長の目が妙な色気を含んだ気がして、私はゴクリと生唾を呑み込んだ。今まで見たこともないような一面を見せられたようで、勝手に心臓がバクバク鳴り始める。

「ち、ちょ、な……」

「なんだ?」

何食わぬ顔をしている安西部長に、私は喉まで出かかった言葉を呑み込んで、「なんでもありません」と真っ赤な顔を伏せた。

もう、安西部長……何考えてるの? いきなりあんなこと……。

これじゃまるで本当に恋人同士……みたい。

あー! 何考えてるんだろ、安西さんはそんなんじゃ――。

「おい、お前、なに百面相してるんだ? ひと通りこの辺ぶらついたらホテルに戻るぞ」

「……はい」

私が安西部長にドキドキしてるなんて……どうして?

彼は尊敬する上司だ。それ以上のなにものでもない……はずなのに、胸の中に湧くこの温かい気持ちはなんだろう――。