「お、気が利くな。やっぱり買ってきてもらえばよかったって思ってたところだったんだ」

ほら、やっぱり……。

部屋に戻ってから安西部長に買ってきたコーヒーを渡すと、『俺はいい』とさっき言ってたくせに、すぐにゴクゴクと飲み干した。

「……花火大会? ああ、確かそんなイベントがあったな」

それとなく花火大会のことを話すと、安西部長はやっぱり花火大会のこともカップル限定特典としてレンタルの浴衣があることも知っていた。

「明日だなんて、グッドタイミングですね!」

見るからに興味がなさそうな安西部長に敢えてニコニコ顔で“行きたいアピール”をしてみる。

「あの、行ってみませんか? せっかくだし」

「俺は視察以外にも仕事を抱えてるんだ、そんな時間はないな。花火なんてこの部屋からだって見えるだろ」

安西部長は先ほどからずっとパソコンに向かって仕事をしている。ホテルに着いてから休憩もしていない様子だ。

長距離運転でただでさえ疲れてるっていうのに、大丈夫かな?

確かに安西部長は私たち以上に仕事も多いし、忙しいのはわかってるけれど……。

その素っ気ない返事に私の視線が急降下する。